こんにちは!ネオコンです!
本日はホワイト企業としても、株主還元積極派の優等生としても評価の高い東京ガスについて見ていきたいと思います!
就職ランキングでも上位にランクインするインフラ企業としては、JR東海や、JR東日本などが挙げられますが、東京ガスはまったりホワイトで働きやすい企業としても人気があります。
また、インフラという安定企業でありながら総配当性向6割を掲げて株主還元を実行する「株主に優しい会社」としても有名であります。
ただ、昨今の脱炭素の流れを受けて若干今までの安定企業神話に綻びが見えはじめたそうです。
昨年2020年11月の説明会では株主還元政策の見直しがあり、株主から強い反発があったとか。。。
気になる店が満載です!
それでは早速、東京ガスの2020年度決算について見ていきましょう!

東京ガス株式会社 CM
東京ガス 2020年度実績
損益計算書
それでは、東京ガスの2020年度の損益計算書の詳細の前に、ざっくりと過去数年間に渡る経営成績と、2020年実績、2021年計画を見ていきましょう。
ご覧の通り、営業利益、経常利益ベースでは数年前まで達成していた1,000億円が2020年と2021年計画では達成できない見通しとなっております。

東京ガス株式会社 東京ガスTOP企業情報株主・投資家向け情報財務・業績情報財務ハイライトより作成
一方、当期純利益は500億円は死守していく形となります。
右肩上がりの成長ではなく、過去の利益にまで回復する途中というのが東京ガスの昨今の経営成績です。
では、2020年度の経営成績の詳細を見ていきましょう。
営業利益776億円(前年比▲23.4.%)
セグメント営業利益791億円(前年比▲25.8%)
経常利益705億円(前年比▲31.3%)
当期利益495億円(前年比+14.3%)
ご覧の通り、当期利益を除いては、約25%程度の減少となっております。
それでは、これらをセグメントベースで見ていきましょう。
下記はセグメント利益791億円をを事業セグメント毎に分解したものです。
東京ガスという社名の通り、ガス事業が884億円と、他の事業のマイナスもあって大半を占めていることがわかります。
ガス一本足打法にならぬよう様々な事業を展開している東京ガスですが、ガスに依存している経営体質であることは否定できません。
どの事業も前年と比べて大きくマイナスとなっていますが、中でもガス事業は▲140億円となっており、全体の前年差▲275億円の大半の主要因となっております。
そこで、ガス事業をもっと詳しく見ていきましょう。
下記は東京ガスの2020年度におけるガス販売数量・その件数です。
下記の通り、昨年と比べて販売数量が減少したことがそのままセグメント利益ベースのガスの減益につながったと言えます。
新型コロナウイルスの影響により、家庭用においては巣ごもりにより需要が増加しましたが、これは家庭用・業務用・卸における「その他」に、一部含まれております。 見た感じ、家庭用でしか増加が認められません。
他には、工業用については、発電用における12月から1月の電力需要増に伴う、ガス需要の増加があったものの、大口件名の契約終了や、一般工業用においても、新型コロナ影響等にともなう稼働減があったため、需要が減少になったとのことです。
東京ガスを取り巻く事業環境の厳しさがわかる2020年度であったと言えます。
それでは、経常利益ベースで各事業を見ていきましょう。
エネルギーと連結調整を除いて全てマイナスです。
新型コロナウイルスの影響があったのは確かですが、正直なくても減益であったような気がしてなりません。
ガス事業の次に大きなマイナスを出してしまっている海外事業など、ガス事業が転んでも他の事業で補えるような事業ポートフォリオの構築が求められますが、そこまでには現状至っていないというのが正直なところです。
株主還元
それでは、東京ガスの2020年度における株主還元政策について見ていきましょう。
配当金60億円(前年同値)
自社株取得に関しては、33億円・170万株を上限に消却を前提に取得
とのことで、2020年度ー2022年度までの中期経営計画で宣言した通り、総分配性向6割程度を遵守した配当政策を2020年度は行うとしております。
しかし、
後ほど詳細は申し上げますが、東京ガスは昨年2020年11月に脱炭素社会への事業ポートフォリオの転換と題しまして、その原資を捻出すべく2020年ー2022年までの中期経営計画中有であるにも関わらず、株主還元政策の変更の可能性を示唆しました。
これはどういうことか、
総分配性向約6割を株主還元に充てるとする、この中期経営計画が始まった時に宣言した株主還元政策を変更することを意味し、間違いなくこれは改悪です。
2020年度を見てみると、損益も減益でパッとしなかった1年でしたし、最後に2020年度は中期経営計画初年度ということもあって、総分配性向6割を遵守した株主還元を行うが、これ以降は見直しの可能性がありますよ、と示唆された不穏な空気で終わった、2020年度の東京ガスの決算発表。
では、肝心の来期の経営計画はどうでしょうか。
早速見ていきましょう!
東京ガス 2021年度通期業績見通し
損益計算書
東京ガスの来期2021年度の経営見通しは、下記の通り、昨年の減益から一転、増益となりますが、過去の利益水準までには回復しないというレベルを計画しております。
営業利益870億円(前年比+12%)
セグメント営業利益865億円(前年比+9.3%)
経常利益720億円(前年比+2.1%)
当期利益520億円(前年比+5.0%)
こちらは冒頭にて、東京ガスの大体の利益推移のイメージを掴んでいただきたく、示したグラフです。
確かに2021年度は増益に転じますが、引き続き当期利益は500億円を死守したものの、営業利益、経常利益は4年前の1,000億レベルにまでは回復しないということがわかります。

東京ガス株式会社 東京ガスTOP企業情報株主・投資家向け情報財務・業績情報財務ハイライトより作成
では、事業セグメントベースで、来期のセグメント利益を分解してみましょう。
セグメント利益合計865億円のうち、ガス事業が794億円とほぼ全てを占める構造となっており、この傾向は昨年と同様です。
なお、海外事業が昨年比倍増しますが、これは2020年度に連結化した北米上流事業の子会社による売上増による影響が大きいようです。
海外事業の拡大は歓迎されるべきことですが、大半のポーションはガス事業が占めておりますので、来期のガスの販売量・件数を見ていきましょう。
こちらが来期のガスの販売量・件数です。
なんとさらに販売数量は減少となる見込みです。
理由は2点挙げられております。
✔︎工業用における大口件名の販売量減少等
✔︎業務用におけるコロナ影響による需要減は、飲食、ホテル等の業種においては、前年度よりは減少するものの一定程度継続すると想定
本業の工業用と、コロナ影響が続くと想定されており引き続き厳しい環境下でのビジネスを来期も強いられそうです。
それでは、経常利益ベースの事業セグメント毎の分析へと移りましょう。
下記の通り、電力、海外、不動産とサブポートフォリオが増益となってくれるおかげで、なんとかガスの▲90億円を消して、経常利益は前年差+15億円の720億円で仕上がる見通しを発表しております。
昨年は本業のガス事業が沈んで他の事業も沈んだので、経常利益は前年比▲30%減少と大きく沈みました。
今年も主力のガスジグ用は沈みますが、他の事業がなんとか補完するようにはしますが、全体の前年比増の増益部分はわずか+15億円に過ぎず、まだまだ東京ガスの収益ポートフォリオの課題が顕在化する形となっております。
株主還元
それでは2021年度の東京ガスの株主還元政策について見ていきましょう。
2020年度もそうですが、例年、東京ガスの決算発表資料には「総分配性向約6割」と書かれた資料があるはずなのですが今年は見当たりません。
代わりに最後のページにある主要計数表に小さく来期の総分配性向が書かれておりました。
2021年度ー
つまり、来期の配当金については未定であるということです。
2020年〜2022年までの中期経営計画の2年目となる2021年度で、早くも「総分配性向約6割」の約束が宣言通り守れなくなるということです。

東京ガス株式会社 2020年度(2021年3月期) 決算説明会 主要計数表(連結)
前の章でも触れました通り、2020年11月に東京ガスが、「コロナ禍を踏まえた東京ガスグループ経営改革の取り組みについて」という発表中に答えはありました。
下記の通り、脱炭素社会、ESG投資の視点を踏まえて
原資を優先的にCO2ネット・ゼロ関連分野に振り向け、脱炭素社会への貢献を目指すため、株主還元政策を見直します。
と書かれております。
安定収益が期待できる企業の総分配性向6割は非常に魅力的で、インフラ企業の中でも東京ガスの評価は非常に高かったのです。
しかし、ここにきて、先ほど2020年度実績、2021年度見通しでわかった通り、本業のガス事業で利益が取れていない中、脱炭素社会に適応するビジネスを創出する上で、東京ガスに余裕が残されていないことがわかりました。
そういう背景もあって、聖域とされていた配当原資までも次世代ビジネス創出に充てざるを得ないと経営陣は判断したのでしょう。
これははっきり言って残念です。
東京ガス まとめ
本日は、安定したインフラ企業で株主還元にも熱心であった東京ガスについて報告させていただきました。
当期利益ベースではかろうじて踏ん張っている東京ガスも、主力事業であるガス事業の停滞とともに足ものの経営成績は芳しくないです。
そして、これから訪れる脱炭素社会向けのビジネスに適応すべく、聖域であった配当原資についてもメスを入れる決断をしたので、これからは厳しい経営の舵取りが要求されることでしょう。
この株主還元政策の見直しが発表された昨年2020年11月の時の株価2,600円を境にその後は、2,600円以下で、最近は2,000円に近い額にまで下落してきました。

なんだかんだ言って、ガス事業なしの復活はあり得ないので、市場環境の好転と、ガス事業の利益回復を実現した後、他事業の強化などを通じて、まずは営業利益、経常利益1,000億円への回帰を目指してほしいと思います。
以上、本日は株主還元で定評があった名門インフラ企業、東京ガスについてご報告させて頂きました。
それではまたお会いしましょう!
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