こんにちは!ネオコンです!
大手化学メーカーの2021年度の決算の見通しが良好と報道されたので、まずは当ブログでも以前からwatchしておりました住友化学の決算発表を分析いたしましたので、今回はご報告申し上げます。
第一弾としてすでに信越化学と並んで営業利益20%を達成した隠れた優良企業である「日産化学」の決算解説をさせて頂きましたので、よろしければご覧ください↓
さて、住友化学といえば、今月、経団連の会長人事で話題になりました。
現在の中西会長(日立製作所会長)が任期途中で辞任し、後任に後任に住友化学の十倉雅和会長が就任する人事を発表されました。
経団連とは、日本企業を司る財界総理とも言われている重要な役職ですが、そこに住友化学出身者が就くとなると、やはり名門住友化学の社会への影響力は引き続き大きなものであると思われます。
それでは、財界総理を輩出した名門、住友化学の2020年度および2021年度の見通しを見ていきましょう!
住友化学 2020年度決算
2020年度決算概況
住友化学の2020年度決算は、
当期利益460億円(前年差+約151億円+48.9%)です。
コロナ禍で大変です!って言いながらマイナス予算を組みながらも結局は、石油化学の落ち込みを情報電子化学と健康・農業関連事業で補い、前年を大きく上回る結果で着地しました。
非常に良い決算であったと率直に思います。理由は、
・コア営業利益では、昨年92億円のプラスであった持分法による投資損益が、今年は▲125億円のマイナスであったこと
・非経常項目も▲408億円もの減損損失を含み、結果的に▲105億円ものマイナスを抱えている
という風に上記2点のマイナスを抱えつつも当期利益を昨年比+49%増で仕上げたのは見事です。
ちなみに、下記が、この1年間に住友化学が行なった通期見通しなのですが、初期はかなりコロナ禍の影響を考慮して保守的に見つつも、結局第1四半期に発表した200億円の2.5倍の利益を計上することになりました。
当期利益(億円) | 配当金(円) | ||
2020年8月4日
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2020年度第1四半期決算概況 | 200 | 12 |
2020年10月13日
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2020年度第2四半期決算概況 | 300 | 12 |
2021年1月29日
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2020年度第3四半期決算概況 | 300 | 12 |
2021年5月13日
|
2020年度決算概況 | 460 | 15 |
次に、セグメント別コア営業利益を見てみましょう。
2020年度セグメント別コア営業利益
昨年と比べて、健康・農業関連事業と情報電子化学部門において大きなプラスが出ており、それが今回の前年比大幅増益の原因になったことがわかります。
決算発表時に、岩田圭一社長は
総合化学メーカーが有する多様な事業展開が結果的に功を奏した形となったのが2020年でした。
なお、
情報電子化学セグメントでは、半導体プロセス材料出荷増加、ディスプレイ関連材料出荷増加が大きな増益要因になり、
健康・農業関連事業セグメントでは、メチオニン交易条件改善、ニューファーム社南米子会社買収、インドでの農薬出荷増加などが利益を押し上げました。
続いて、キャッシュフローです。
2020年度連結キャッシュ・フロー
昨年不振だった営業キャッシュフローも大幅に増加しておりますし、投資キャッシュフローも健全化しました。
その結果、フリーキャッシュフローも1,971億円と黒字化し、期末キャッシュバランスも3,609億円と昨年の倍の残高となり安心して2021年度を迎えられる準備ができました。
なお、投資キャッシュフローですが、下記の通り昨年、連結小会社である大日本住友製薬株式会社に通する投資案件でお金をたくさん使ったのでその反動で多くプラスになったというのが大きな理由です。
投資キャッシュフローの額も健全化しましたね。
2020年度連結キャッシュ・フロー
最後に一言物申したいのは、配当です。
当期利益は460億円です。
期中の度重なる業績見通しの上方修正により、結局最後は2020年度の配当を15円としましたが、昨年の時利益が309億円であるにも関わらず配当17円だったのを考慮すると、最低でも昨年同様17円の増配は欲しかったところです。
当期利益(億円) | 配当金(円) | ||
2020年8月4日
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2020年度第1四半期決算概況 | 200 | 12 |
2020年10月13日
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2020年度第2四半期決算概況 | 300 | 12 |
2021年1月29日
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2020年度第3四半期決算概況 | 300 | 12 |
2021年5月13日
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2020年度決算概況 | 460 | 15 |
後述致します通り、2021年度は3年前の水準に近い20円の配当を計画しているそうなので、この増配に期待したいと思います。
住友化学 2021年度予想
2021年度業績予想概要
住友化学の2021年度業績予想は、
コア営業利益2,000億円(前年差+524億円)
当期利益1,000億円(前年差+540億円)
配当20円(前年差+5円)
と大きく躍進するとの見通しです。
セグメント別コア営業利益の観点から見てみると、石油化学品の市況が改善し大きく利益を押し上げていくのがわかります。
2020年度同様、情報電子化学と健康・農業関連事業は引き続き利益をきちんと手堅く稼いでいく形となります。
故に、売上収益では過去最高となる25,000億円、コア営業利益では3期ぶりの2,000億円復帰を計画しております。
なお、ここ数年課題であった住友化学の財政状態ですが、有利子負債学は横ばいですが、D/Eレシオが微減しており、着々と健全化の方向へ向かって行っているのも評価できます。
最後に配当金ですが、住友化学は、2021年度は20円の支払い配当金を計画しております。
配当性向は30%程度となり、利益が取れていた3年前に回帰した形となります。
ここ2年間は利益が出せないながらも無配とはいかず、利益が取れない中、配当金を支払っていたため異常に高い配当性向の値となっておりますが、利益が取れる2021年度からは元の水準である配当性向30%に回帰する計画です。
最後に
数年前、石油化学事業のウェイトが載っていた日系大手総合化学メーカーは生き残れるか心配される声もありました。
しかし、今回の住友化学の決算を振り返って、きちんと情報化学や農薬といったスペシャリティケミカルの事業がきちんと稼ぐビジネスモデルに転換できたことからこの数年前の不安は払拭されました。
今後もコロナ禍以外の事業リスクは起こりうるので、どんな環境になったとしても多角的な事業基盤を存分に生かして常に利益を上げて、キャッシュを稼いで、株主に還元するリーディングカンパニーでいて欲しいと思っています。
今回の報告は以上です。
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