三菱商事第2四半期決算は867億円(前年同期▲1,557億円)であり、これは8月に発表した2020年通期見通しに対して進捗率43%となっております。
事業系、市況系どちらも前年同期に比べて大きくビハインドとなっています。
事業系については、自動車・モビリティが三菱自動車工業における減損損失取り込みに加え、三菱自動車工業やアジア自動車事業における 持分利益の減少などで大きくマイナス(ほぼほぼ三菱自動車との縁を切らないが故に生じた損失ですね。。。)
市況系については、昨年最大の稼ぎ頭であった金属資源が豪州原料炭事業における市況下落による影響などでマイナスへ
トータルで全体進捗として43%とまぁまぁの出来で、8月に約束した通期2,000億円の据え置きなので織り込み済みのシナリオ通り上期損益を仕上げたと言えるでしょう。
キャッシュフローは上々 損益苦境だが投資は惜しまぬ姿勢を評価
果敢な投資姿勢を見せる 豪州原料炭事業への投資は今後期待
三菱商事の第2四半期キャッシュ・フローですが、営業収益キャッシュ・フローベースで、2,291億円と前年比で1/3くらいの減少となりました。
しかし、前年よりも1/3近く減った営業収益キャッシュ・フローでありながらも、新規・更新投資の姿勢は弱めることなく果敢に行っており、ネットベースの投資キャッシュ・フローは▲2,139億円となっており、営業収益キャッシュ・フローで稼いだキャッシュをほぼほぼ投資に全振りしている様子が伺えます。
なお、この投資キャッシュ・フローは欧州総合エネルギー事業 (電力ソリューション) 、豪州原料炭事業(金属資源) 、北米不動産事業(複合都市開発) LNG関連事業(天然ガス) 、銅事業(金属資源)などに使われているようです。
ここで、私が注目したのは、先ほどの損益項目で三菱商事の第2四半期上期市況系損益の足を大きく引っ張った豪州原料炭事業(金属資源)にさらに投資している点です。
詳細は記載されていないのであくまで私の推察の域を出ないのですが、市況悪化で投資資産価値が下がっている中ここでさらに追加投資しているということは、ナンピン買い、つまり安い価格で買い増ししている状態であると考えられます。
ですので、コロナが収まり、今季は蒸発してしまったエネルギー需要が回復した時にここで買い増しした豪州原料炭事業が盛り返すのに期待しております。
故に、営業収益キャッシュ・フローで稼いだキャッシュをほぼほぼ投資に全振りしているということは、それだけキャッシュに対して余裕と自信があるということです。
コロナウイルスの影響で損益が悪化する企業は資金繰り、キャッシュベースでも苦境を強いられる企業が多くなっています。しかし、三菱商事は延命のためにキャッシュを溜め込むのではなく、この市況の悪化を利用して投資対象資産を安く買っています。
ですので、三菱商事は将来の利益およびキャッシュエンジンに育成する投資の姿勢を貫いている点が非常に高く評価できる点です。
財政状態も健全で累進配当も維持できる健全性
損益面で課題が残りますが、キャッシュフロー同様、財政状態については安定しております。
連結バランスシートを見てみましょう。
総資産が18.0兆円から17.8兆円とスリムになり、負債合計が微減、資本が横ばいという形になっており、自己資本比率も29%から29.5%と微増しています。
コロナで苦しむ企業のように、借り入れが先行して負債が積み上がり財政状態が傷んでいる様子は見受けられません。
キャッシュ・フロー計算書では、長期借入債務等による調達が、昨年上期は+1,740億円であったが、今回は6,010億円と3倍以上に増えているとありますが、心配には及びません。
ネット有利子負債も減っておりますし、健全性も担保されていることがわかります。
しかし、フロー情報であるROEとROAの今期の見通しは、昨年の1/3程度と大きく減少してしまいます。(純利益が下がっている以上当然ですが)
今年は損益は踊り場だが累進配当は維持 来年以降期待
三菱商事はきちんと累進配当制の下、134円の配当維持を発表しております。
損益が前期の半分以下の通期2,000億円を見込んでも増配を発表できる企業体力は評価できます。
損益だけで見ると、純利益が昨年比半減以下は不安に思えますが、キャッシュ・フローと財政状態上はあまり問題ないことを先ほど申し上げました。
コロナ不況で、世界中の企業が苦しむ中、損益が半減しても増配を打ち出す三菱商事は今後も私の力強い投資先であり続けるでしょう。
このポテンシャルで配当利回り5%超は割安
下記は、三菱商事のここ1年間の株価推移です。8月末にバークシャー・ハサウェイ社からの出資があり一時的に株価は上がりました。
が、その後沈静化し、だいたい2,500円付近の株価を推移しております。
現時点での配当利回りは5%超であり、資産株としての魅力は高まるばかりだと思われます。

最近のコメント