どうもー!ネオコンです!
さて、本日は、モノづくり日本を長年支え続けた伝統企業、三菱重工業の2020年度決算説明及び2021事業計画推進状況につき分析しましたので報告させていただきます!
重工業メーカーについては以前三菱重工業の競合他社であるIHIについて記事を書いておりますのでよろしければ下記ご覧ください!
三菱重工業といえば、三菱商事、三菱UFJ銀行と共に三菱財閥のトップ3を占める最強兄弟として有名です。
長男は三菱重工業、次男が三菱商事、そして三男が三菱UFJ銀行として知られています。
次男の三菱商事の2020年度決算についはこちら↓
戦時中は零戦も製造して、我が国の軍事産業を司っていると言っても過言でないくらいのエリート企業三菱重工業です。
が、近年、業績はあまりぱっとせずちょっと不安の声も聞こえてきているようです。(私のツイートでも度々三菱重工の経営面での厳しさは指摘させていただいております)
まぁ前置きはこのくらいにして、三菱重工業の2020年度決算説明及び2021事業計画推進状況を一緒に見ていきましょう!
三菱重工業 2020年度決算
損益計算書
三菱重工業の2020年度の連結経営成績サマリーですが、受注高、売上収益についてはコロナウイルスの影響もあり前年比減でだいたい見込んでおり、最新の2月の見通しと同じくらいの仕上がりとなりました。
事業利益については、後述しますが、スペースジェットの投資が減少して増益。
当期利益は、これは19年度の決算において、SpaceJet関連で、18年度以前の損失に関する繰延税金資産を計上するという特別な利益が昨年あり、これの反動で事業利益と相反する動き、仕上がりとなっております。
下記にて定量的に見ていきましょう。
着目すべきは、事業利益です。
事業利益は、定常収益1,703億円から、問題のSpaceJet投資▲1,162億円を差し引いた540億円となっております。
一見、これは昨年は事業利益▲295億円の赤字に対して黒字化したかのように見えますが、
昨年も定常収益2,338億円から、問題のSpaceJet投資▲2,633億円を差し引いて▲295億円の赤字となっております。
つまり、今年はSpaceJet投資を半減させて事業利益を黒字化しましたが、そもそもSpaceJet投資を考慮する前の定常収益の時点で、今年は2,338億円から1,703億円へと減益となっているので全く楽観視できる状況にはありません。
セグメントベースで見ても、全ての事業で2019年度と比較して減益となっていることから定常収益ベースで利益が取れていない体質が垣間見れます。
そして、後述しますESG投資の部分とも重複しますが、三菱重工業は主力がエナジーで特に火力事業に傾倒しております。
その火力事業(スチームパワー)の部分で2020年度に減益が発生しているのは着目すべき重要な懸念事項かと思います。
一部工事採算悪化とは記載ありますがどうなのでしょうか。何れにせよ、ESG、脱炭素の社会の中で火力事業に頼らない経営ポートフォリオの組み替え、抜本的改革が急務だと思います。
次に三菱重工業の財政状態を確認していきましょう。
連結財政状態
次に、三菱重工業の連結財政状態ですが、冒頭に「戦略的なバランスシートの圧縮・健全化」と書いておりますが、正直そこまで抜本的な効果は2020年度の貸借対照表には表されておりませんでした。
巨大な重厚長大な三菱重工業の固定費を賄うにはお金が必要ですが、先ほどの損益とも関連しますが、稼げていない以上、お金を借りるしかなく有利子負債は前年比1.5倍にも膨れ上がり、DEレシオも0.63倍と不安を残す値となっております。
連結キャッシュフロー計算書
続いて、連結キャッシュフロー計算書も軽く見ておきましょう!
先ほどのバランスシートで有利子負債が激増していることを申し上げましたが、2020年度は営業キャッシュフローと投資キャッシュフロー が共にマイナスとなっており、当然フリーキャッシュフロー もマイナスで極めて厳しいキャッシュ事情となっております。
正直、PLベースではなく、実のキャッシュを稼ぐという意味で抜本的な解決策が早期に求められます。
ここまで暗い話ばかりになったので、我々も一安心したいので、三菱重工業の2021年度の業績見通しを見てみましょう!
三菱重工業 2021年度事業計画推進状況
さて、それでは三菱重工業の2021年度事業計画推進状況を見ていきたいと思います!
三菱重工業の2021年度の数値目標は、
事業利益率4%(前年差+2.5%)
ROE7%(前年と比べて約2倍)
配当90円(前年差+15円)
と大きく躍進するとの見通しです。正直本当に大丈夫かよ?というのが個人的な感想です。
定量的に見てみると下記の通りです。
事業利益1,500億円(前年差+960億円)
当期利益900億円(前年と比べて約2倍)
フリーCF0(前年差+2,771億円)
正直、増配を高々と宣言してくださるのは有難いのですが、キャッシュをどの事業でどう稼いで増配できる余裕になったかの言及が欲しいところでした。
事業利益をセグメントベースで見てみると、下記の通り、稼ぎ頭のエナジーが減益となるも、他のセグメントの増益で補完し、2021年度は1,500億円で仕上がるという構想です。
しかし、2021年度は減益となりますが、今後の脱炭素の動きに合わせて人員整理などメスを主力の火力事業を有するエナジーセグメントに入れているので、三菱重工業が今後短期的な視点で何の事業で主に稼ぐ気なのか不透明なのが率直な感想です。
もっと厳しいことを言うと、今後の脱炭素、ESG投資の観点から水素システムを次世代のエナジー事業の収益の柱としようとしておりますが、下記の水素エコシステムのキャッシュの原資はどこか?と言うのも気になるところです。
日本製鉄のように国にお願いすると言う形になるのだけは勘弁してほしい。。。
総括
さて、一通り三菱重工業の直近の決算概況と今後の見通しについて見ていきましたが、実体のビジネスと目標としている数字との乖離が散見されるように見受けられました。
三菱重工業は間違いなく我が国の歴史ある名門企業であることは誰の目にも明らかです。
しかし、SpaceJetという実現可能性は極めて困難であるにも関わらず、長年の夢を追い求めすぎたが故に支払った代償は大きすぎると思います。
今の稼ぐ収益源は火力事業。
であるにも関わらず、今後の脱炭素、ESGの風潮を受けて、三菱重工業は新規の水素なり、新エナジーなり新しい事業を生み出さねばならなくなりました。
今お金がないのにその水素ビジネスの原資はどこから調達するのか?また有利子負債を増やして調達して行うのか?伝統企業だから国にお願いするという手もあると思います。
正直、3年後に下記の事業利益率とROE目標を達成するのは困難とは思いますが、当ブログでも4半期決算ベースで三菱重工業の業績進捗について見ていき、随時報告させていただきます!
事業利益率4%(前年差+2.5%)
ROE7%(前年と比べて約2倍)
以上、「SpaceJetの夢から覚めたが、今後の反撃はできるのか?三菱重工業!」でした。
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