さて、三井物産の次に5月6日に総合商社決算第2弾として丸紅の決算発表がありました。
三井物産2021年3月期決算↓
ちょうど1年前は赤字決算に転落した丸紅。
総合商社の中でも財政状態に課題のある丸紅は、新型コロナウイルスの影響もあり、昨年の決算時には減配を発表して一気に投資家一同を不安に陥れました。
しかし、2020年度は新型コロナウイルスの営業もありつつ、期中の業績の上方修正、増配を決定し、安定感を持って5月6日の決算の日を迎えることができました。
5月6日は翌日に2020年度連結純利益2,000億円予想を発表していた三菱商事の決算が控えていることから、2020年度連結純利益予想1,900億円としていた丸紅は、どう仕上げたのかに注目が集まりました。
三菱商事2020年度決算↓
それでは、丸紅の2020年度連結決算および2021年度見通しを見ていきましょう。
丸紅 2020年度連結決算
丸紅の2020年度連結決算は、
基礎営業キャッシュフロー3,696億円(前年度+微増、21年2月公表従来予想+200億円)
当期利益2,253億円(前年度は赤字、21年2月公表従来予想+353億円)
1株あたり配当金は、33円(前年度35円、21年2月公表従来予想28円なので+5円)
と、従来予想を上回る評価できる決算でした。
基礎営業キャッシュフローは21年2月の公表通りに仕上げ、当期利益も2,000億円を超えて、2020年度は三菱商事も超えて、総合商社第3位となりました。
(首位:伊藤忠商事、2位:三井物産)
伊藤忠商事2020年度決算↓
配当も2020年の11月4日には22円という減配された予想が出ましたが、2021年2月には28円、そして今回の決算で33円ということで昨年の35円の配当金から微減の減配という形になりました。
純利益についてですが、大半は前年度赤字計上した際の減損損失の反動が大半ではあるものの、アグリ事業、食料、化学品といった非資源ビジネスで増益を実現ししっかりと連結純利益2,000億円超を成し遂げました。
また、丸紅を語る上で切っても切り離せない財政状態の健全性を示すDEレシオです。
この数値は、20年11月時点で1.1倍になると想定していたものも、蓋を開けてみれば前年度末比0.28ポイント改善の0.88倍と過去5年間で最も低い値となりました。
コロナウイルスの影響で1年前は大苦戦が想定されると弱気な見通しで挑んだ2020年度でしたが蓋を開けてみると、利益もそこそこ、財政状態の健全化も進んだ形となりました。
丸紅 2021年度見通し及び年間配当金
2021年度見通し
丸紅の2021年度見通しは、
当期利益2,300億円(前年度より微増)という若干固い数字での見通しとなりました。
2020年5月の2019年度決算時にも2020年の見通しを保守的に発表した丸紅ですから、期中の上方修正に期待したいです。
一方、基礎営業キャッシュフローについても微減で、2021年度は3,500億円とのことです。
しかし、丸紅に関しては前年度2019年度に赤字転落しようが、下記の通り、2016年度から手堅く基礎営業キャッシュフロー3,000億円を稼いでおりますし、過去3年間に限ると3,500億円を超えております。
このことからも、来期も3,500億円は手堅く稼いで、2020年度以上のキャッシュアウトを下記の通り見通しているように新規投資や毎年の債務返済に充てる計画です。
きちんと基礎営業キャッシュフローを積み重ねているので、次世代のビジネスの種まきや財政状態健全化にお金を使うことができるのでプラス材料として評価したいです。
2021年度年間配当金
丸紅の2021年度の年間配当金は2020年度の33円から1円増額の34円という見通しになっております。

2020年度 決算 IR資料 2020年度連結決算と2021年度見通し
純利益が微増、基礎営業キャッシュフローが微減という中でもう一声欲しいところでしたが1円増配という渋い見通しとなっております。
この理由は2021年度の資本配分の計画にあります。
既出ですが、下記の資本配分の2021年度見通しをご覧下さい。
丸紅は2020年度に約2,000億円ものキャッシュを債務返済等に充てており、だからこそDEレシオ0.88倍という健全性の高い数字を実現することができました。
もう債務返済はしなくて良いのでそのお金を株主還元に使えないのか?というご指摘が出てきそうです。
しかし、2021年度計画にあります通り、新規投資で2,700億円、1円増配のため配当700億円を支出するため、株主還元後のフリーキャッシュフローは600億円となり、丸紅としては限界なのでしょう。
丸紅 決算発表後の株価、市場の反応
丸紅の株価は、決算発表が行われた5月6日に増配が微増だったこと、2021年度の純利益の伸びがイマイチであったため、下落しました。
しかし、5月7日に住友商事、三菱商事の決算の結果が丸紅を下回っていたため、株価は上昇したまま取引を終えております。

丸紅 決算総括
2021年3月期の丸紅の決算の総括ですが、2月に純利益、増配を発表したこと及び、4月末の三井物産の決算が素晴らしいかったがため期待は大きかった。
しかし、2021年度の業績見通しの純利益、株主還元策に元足りなさがあったというのが本音です。
しかし、昨年赤字転落しながらも今年、ネタバレになりますが、三菱商事を破っての総合商社純利益3位は善戦したと言えます。
丸紅への期待も高まり、今後の株価の上昇も想定されますが、増配が1円だけだったので配当利回りの低下が惜しい点です。
早速5月7日時点で、配当利回り3%を下回ってしまっており、若干丸紅に不安材料が今期の四半期決算中に出て株価が下落した際に仕込むのがベストでしょう。
とは言え、丸紅は総合商社唯一の10万円以下で買える銘柄であるのも長所の一つです。
権利落ち最終月にお金が足りなくて三菱商事や三井物産を変えなければ、丸紅を買うという戦略も有効です。
2021年度の丸紅の経営に期待ですね!
それでは、今回の分析は以上となります。
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