日本たばこ産業(JT) 2020年度決算を徹底解説

日本たばこ産業株式会社 業績・財務ハイライト

こんにちは!ネオコンです。

本日は高配当株で有名なJTについてみて行きたいと思います!

JTといえば、異次元とも言える高配当を出すことで非常に有名で、ツイッターでも「JT共和国」の国民であることを表明する投資家ツイッタラーも存在します。

しかし、2020年2月に発表されたJTの決算発表で何やら異変があったそうです。

来期2021年12月期は上場以来初の減配となることを宣言したのです!!!

日本たばこ産業株式会社 2020年度 決算説明会資料

ZAI ONLINE様より

これを受けて、ツイッターでもJTホルダーの方々の中で大きな波紋を呼んだのは想像に難くありません。

それでもいまだに高配当株であることは変わりません。

今回は、JTの2020年12月期決算の解析および2021年度の業績見通しを見て、JTの今後の配当見通しにウエイトを置いて一緒に見て行きたいと思います☺️

日本たばこ産業(JT) 2020年度実績

損益計算書(営業利益まで)

それでは、JTの2020年度の損益計算書を見ていきましょう。

2020年度は下記の通り、売上収益から当期利益まで全て前年比減という結果となりました。

当期利益に関しては、他の項目と異なり、▲10%もの大きな減少となり、4年前は4,200億円もあった当期利益が3,000億円前半となり、JTの収益力の低下が露呈してしまう形での仕上がりとなりました。

次に、実態ビジネスベースでの前年差を検証すべく、以下の調整後営業利益ベースで見て行きましょう。

調整後営業利益
営業利益+買収に伴い生じた無形資産に係る償却費+調整項目(収益および費用)

以下の通り、調整後営業利益は前年差微減の4,870億円とついに守り抜いていた5,000億円を割ってしまう形となりました。

国内たばこ事業の減少を海外が前年水準を維持し、医薬事業が業績を伸ばす形で踏ん張りましたが、調整後営業利益5,000億円を死守することはできませんでした。

次に財務報告用の営業利益です。

こちらは、実態ベースを示す先ほど申し上げました調整後営業利益4,870億円をさらに下回る4,691億円となっております。

2019年度に計上した医薬事業の一時金収入の剥落などで財務諸表報告ベースでの営業利益では医薬事業でのマイナスが大きく響く形となっております。

当期利益、重要経営指標

それでは、JTの当期利益および重要経営指標についても2020年度までの推移を見て行きましょう。

当期利益は右肩下がり。4年間で1,000億円も減少しております。

続いて、EPSです。もう200円を切っていて久しいという感じです。

ROEもかつては20%に迫る勢いで高いレベルの経営ができておりましたが、下降の一途をたどっております。

ROAもかつては10%を超えていてかなり効率的な経営ができていましたが、減少し続けております。

では、2020年度まで経営成績が下降の一途を辿りつつあるJTの来期は復活なるのか、2021年度の経営見通しについて見て行きましょう。

日本たばこ産業(JT) 2021年度通期業績見通し

損益計算書

JTの来期2021年度の経営見通しは、下記の通り、営業利益以下全て減益となる見通しです。

特に財務報告ベースの営業利益、当期利益は約20%もの減少を想定しております。

調整後営業利益4,750億円(前年比▲2.5%)

営業利益3,630億円(前年比▲22.6%)

当期利益2,400億円(前年比▲22.6%)

昨年、400億円もの特別利益を計上した旧JTビルの売却益の反動や、国内たばこ事業の競争力強化に係る施策関連費用計上などで減益が見込まれます。

フリーキャッシュフロー も前述した昨年の旧JTビルの売却キャッシュゲインの反動などがあり、約1,900億円のマイナスの3,150億円となります。

当期利益は来期ついに3,000億円を割って、2,400億円を想定するというかなり厳しい数字となっております。

そしてこの決算発表の最後のページに当たります、”Closinhg Remarks”を見ておきましょう。

Closinhg Remarks

下記の通り、事業環境は極めて厳しいことが述べられており、本業のたばこ事業の将来性を期待した投資の減少、不動産売却による特別利益減少による当期利益の減少に触れられており、純利益ベースだと我々株主も覚悟が必要となるコメントとなっております。

そして極め付けは、JT株式最大の魅力である配当金額の削減

冒頭でお示しした推移グラフをもう一度示します。

2020年度154円だったのが、まさかの130円へ減配

日本たばこ産業株式会社 2020年度 決算説明会資料

ZAI ONLINE様より

JTの増配伝説が潰えた瞬間でした。

では、本稿の最大の焦点であるJT株の今後の配当政策について深掘りして行きたいと思います。

日本たばこ産業(JT) 配当政策の深掘り

2021年度は上場以来初の減配に転じる見通しで、JTホルダーの間で衝撃が走った2021年2月の決算発表。

この減配は一時的なものなのか、今後減配の一途をたどるホラーストーリーの序章に過ぎないのか。

本項ではこのJTの配当政策について深掘りして検証して行きたいと思います!

下記の「経営計画2021」中の株主還元政策についてご覧ください。

ここでは配当性向75%を目安とすると書かれております。

では、これまでの配当はきちんとこの配当性向に沿った形であったのかを振り返って見ましょう!

こちらは、2014年からのJTの配当金と連結配当性向を示した図です。

この通り、2019年、2020年は歴代最高額となる154円の配当を決議しておりますが、どちらも連結配当性向は78.6%と88.1%ともう限界を迎えているのがわかりますね。

2019年は1株あたり利益の8割を、2020年は1株あたり利益の9割を配当に当てていた計算になります。

これでは、たばこ事業の強化だったり、他の医薬品事業に投資しようと思っても配当金への捻出で事業投資への原資が確保できませんね。

そこで、JTは来期は154円から130円での減配を決断したということになります。

しかし、これは130円でも来期のJTの損益から考えるとこれでも最大限株主のことを慮った政策であることがわかります。

上記の図によりますと、配当130円の場合、配当性向96.1%となります。

え!?

配当性向96%ということは来期2021年12月期に稼いだ純利益をほぼ全て配当に当てますよと宣言しているのです。

ちなみに配当が154円のまま維持されていた場合の配当性向を計算してみましょう。

2021年12月期の連結業績予想(2021年1月1日~2021年12月31日)における基本的1株当たり 当期利益は135.30円なので、

連結配当性向は、154円/135.30円=113.82%

となります。

稼いだ利益以上を配当として出すようになったら前年までに貯めておいた利益剰余金から出さねばなりません。

いくら増配伝説を継続するJTといえどもそこまではできなかったのでしょう。

ここから導き出されるJTの配当政策は、

いくら大盤振る舞いのJTといえども、当期稼いだ利益の中からしか配当原資は確保できない。

つまり、配当性向を100%を超えること配当金の拠出はしないということです。

では、今後、JTは配当を前記のような154円レベルまで戻せるのでしょうか。

その条件は、ズバリJTがそのレベルに相当するだけの当期利益をあげるしかないです。

JTが配当154円を拠出する場合、先ほど申し上げました通り、JTは連結配当性向75%に基づくため、求められる1株あたり当期利益(EPS)は、

154円/75%=205.33円です。

では、1株あたり当期利益(EPS)が205.33円レベルとはどのくらいかと言いますと、先ほどお示ししました過去5年間の1株あたり当期利益(EPS)の下の棒グラフをご覧ください。

205.33円というのは、2018年度の215.31円を若干10円くらい下回る数字だとご理解ください。

であれば、2018年度の当期利益は、、、

こちらも先ほど出てきた表ですが、2018年度は当期純利益3,857億円となっております。

これを下回ると考えて、ざっくり3,700億円程度の当期利益は、連結配当性向75%に基づいた配当金154円を出すには必要となる当期利益であると考えます

来期2021年12月期の当期利益が2,400億円であると先ほど報告させていただきました。

過去4年間で当期利益を1,000億円減少させたJTが1,000億円を回復させて、当期利益3,700億円に到達するのはかなり厳しいと考えます。

もちろん、配当金の原資はキャッシュである以上、着目すべきはキャッシュであり、JTがキャッシュフローを創出できる企業であることは百も承知です。

しかし、今回発表した「経営計画2021」の中に中長期で創出される基礎営業キャッシュフロー についての言及がなされていなかったので正直、伝統と信頼のあるJTのキャッシュジェネレーション能力に疑問を呈さざるを得ないのです。

日本たばこ産業(JT) まとめ

本日は、高配当で有名な日本たばこ産業(JT) について解説させて頂きました。

上場以来初の減配見通しが示された2021年12月期。

JTの2021年12月期の当期利益2,400億円を考慮すると、減配後の配当130円ですら配当性向96%であり、JTは最大限の株主還元をしているといえます。

今後の前期レベルの154円の配当を実行するには、「経営計画2021」で示された連結配当性向75%に基づくと、2018年度に若干劣る約3,700億円レベルの当期利益が必要です。

来期の当期利益見通し2,400億円から1,000億円プラスして3,700億円レベルまで復帰させるのは、昨今のJTの置かれている企業環境を鑑みても極めて厳しいと考えます。

現在の配当利回りは7%程度ですが、これ以上は分子の配当額が減っていくことにはなりそうですが、それでもJT株は高配当ということで保持できる方は買って見てもいいかもしれません!

以上、本日はガチの高配当株、JTの配当政策に関わる今後という題目でご報告させて頂きました。

それではまたお会いしましょう!

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