さて、5月10日は、2020年度の総合商社決算の大トリ、2020年2月の各社業績見込みでも首位に返り咲く予想となっている伊藤忠商事の決算がありました。
昨年は惜しくも首位を三菱商事に明け渡してしまった非財閥商社の雄である伊藤忠商事は、無事最終見込み通り、首位に返り咲けるか!?
2010年からCEOとして伊藤忠商事の大躍進を牽引したカリスマ経営者岡藤会長CEO
2020年度は首位確保、2021年度見通しでも2連覇なるか、岡藤マジックに注目です!
伊藤忠商事 2020年度決算
2020年度決算概況
伊藤忠商事の2020年度の決算概況は、
実質営業キャッシュフロー5,740億円(前年度▲280億円)
当社株主帰属当期純利益4,014億円(前年度▲999億円、21年2月公表従来予想+14億円)
1株あたり配当金は、88円(前年度+3円)
と、従来予想の当社株主帰属当期純利益4,000億円を根性できちんと達成して株主の期待に応える文句なしの決算でした。!!
新型コロナウイルスの影響で苦しむ中、前年比の利益減を最小限にとどめてこの経営成績を残すのは流石と言わざるを得ません。
前回王者の三菱商事を破り、決算発表前の5月6日時点での2020年度暫定首位であった三井物産の3,355億円を大幅に上回って、当期純利益では堂々の総合商社首位に返り咲きました。
それでは、2020年度の当社株主帰属当期純利益をセグメント別に見ていきましょう。
前年5,013億円に対して▲約1,000億円の減益決算となるも、伊藤忠商事の純利益をしっかりと支えたのが、
金属事業と、エネルギー・化学品事業の2つです。
金属事業では、石炭価格の下落、ブラジル鉄鉱石事業の受取配当金の減少、 伊藤忠丸紅鉄鋼の取込損益減少及び豪州石炭事業での減損損失など、他の総合商社と同じような逆風に直面しました。
しかし、鉄鉱石価格の上昇という大きなプラス材料があって、この金属事業のマイナスを最小に抑えました。
今回の資源ビジネスで核になるのは、石炭と鉄鉱石
鉄鉱石を有する三井物産、伊藤忠商事は鉄鉱石の価格上昇で大きな恩恵を受けましたが、石炭を有する三菱商事は金属資源事業では大きな減益となっております。
次に、
エネルギー・化学品事業では、化学品関連事業の堅調な推移や衛生用品取引及び電力取引等の増加が事業収益に大きく貢献し、中でも化学品は第4単四半期として過去最高更新に資するとあります。
2020年度実質営業キャッシュ・フロー
伊藤忠商事の2020年度実質営業キャッシュフローの状況は、
実質営業キャッシュ・フロー5,740億円(前年度▲280億円)
そして、着目すべきなのは、2020年度に行った過去最高ともなる実質投資キャッシュ・フロー▲7,550億円です。
この実質投資キャッシュ・フロー▲7,550億円の詳細は下記にある通りですが、
✔︎機械事業での東京センチュリー
✔︎食料事業で不二製油グループ本社の追加取得
✔︎第8事業での投資の取得
✔︎第8事業、食料事業、エネルギー・化学品事業、金属事業での固定資産の取得等
素晴らしいのは下記の2点を満たしている点に尽きます。
・非財閥商社ながら財閥系の三菱商事、三井物産レベルの実質営業キャッシュ・フロー6,000億円レベルを稼ぎながら、かつ
・過去最高の実質投資キャッシュ・フローを支出し、未来の事業への投資を実行した
確かに2020年度単年度だけをとってみると、実質フリー・キャッシュ・フローは▲1,810億円と期末キャッシュを減らす形にはなっております。
しかし、後述しますが、2021〜2023年度中期経営計画では、実質営業キャッシュ・フローへの言及はされていないものの、さらなる増配が宣言されています。
このことから、2020年度はキャッシュが少し減少したとしても、来季以降も引き続き力強く稼ぐ自信があると見て取れるので、伊藤忠商事の2020年度のキャッシュマネジメントについては非常に高く評価できます。
伊藤忠商事 2021〜2023年度中期経営及び株主還元方針
2021〜2023年度中期経営 Brand-new Deal 2023
伊藤忠商事は2020年度に盟主である三菱商事を破って、時価総額・株価で史上初の商社No.1を実現し、最高の形で前回の中期経営計画を終えました。
2021年度からは新しい新中期経営計画「Brand-new Deal 2023」が始まり、今回それが発表されました。
まず大前提として、2023年度までに当社株主帰属当期純利益6,000億円を実現すると宣言しております。
そして、その初年度である2021年度に、
連結純利益5,500億円(前年度+1,500億円)
1株あたり配当金は、94円(前年度+6円)
を実現すると発表しました。
では、早速この連結純利益5,500億円(前年度+1,500億円)の内訳を見てみましょう。
驚くべきことに、上記の全8事業で全て2020年度を上回る純利益を計画しています!
他の総合商社が今後3年間かけてなんとかコロナ禍前の業績に回復するために努力しますと言っている中、来年にはコロナ禍前の業績を超えますと宣言している伊藤忠商事の中期経営計画は心強いですね。
この実質営業キャッシュフローへの言及はありませんですたが、2021年度に早くも増配を発表し、今後も累進配当制を継続すると宣言している以上、キャッシュを引き続き稼ぎ続ける姿勢であることは間違いありません。
株主還元方針
伊藤忠商事の2021年度の株主還元方針は、1株あたり配当金94円(前年度+6円)を計画しております。
そして驚くべきは、この2023年度までの配当方針です。
・ 2021年度の1株当たり配当金は94円を下限
・ 2021年度期中に業績見通しを上方修正する場合は増配を実現
・ 中計期間中に1株当たり配当金100円を目指す
我々株主にとって、大事なのは配当金。
これを一番に考えてくれている伊藤忠商事の中期経営計画における株主還元方針は素晴らしいの一言です。
特に2番目の業績見通しの上方修正を行った際は増配をする、と具体的に市場に約束してくれているのが最も好感が持てます。
他の総合商社が、下限設定のみなど、具体的なマーケットとの約束事を交わさない中、伊藤忠商事は結果も出すし、約束もしてくれる、今最もアツい総合商社と言えます。
伊藤忠商事 決算発表後の株価、市場の反応
次にここ数日間の伊藤忠商事の株価推移を見ていきましょう。
総合商社で最初の決算発表が行われた三井物産の4月末から期待が先行して上昇を続け、決算発表が行われた5月10日13時すぎに13時10分に3,595円を記録し、その後下降し本日の取引を終えました。
本日も上昇を続けている三井物産と丸紅と違って、こちらは期待値が高すぎるが故に微減となってしまいましたが、良い評価であることに変わりはありません。
三井物産と丸紅は、良い意味でサプライズ決算だったので本日も株価上昇が続いております。

伊藤忠商事 決算総括
2020年度の伊藤忠商事の決算の総括ですが、あっぱれ、首位奪還おめでとう!の一言に尽きます。
ただ一点申し上げるとすると、三井物産の純利益が3,355億円、三菱商事の純利益が1,700億円であったにも関わらず、両者は実質営業キャッシュフロー 6,000億円を稼いでいます。
純利益首位の伊藤忠商事ですら稼げない6,000億円をこの2社は達成しているので、やはりたとえ純利益が悪くても確実にキャッシュを稼ぐ財閥商社の強さを感じたことは否めません。
勿論、これは伊藤忠商事の欠点ではなく、三井物産と三菱商事の強みを述べたにすぎません。
ただ一点、伊藤忠商事に物申すことがあるとすれば、利益が不振でも三井物産と三菱商事同様に実質営業キャッシュフロー 6,000億円を継続的に稼ぐ体質を構築して欲しいです。
伊藤忠商事、おめでとうございます!
それでは、今回の分析は以上となります。
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