こんにちは!ネオコンです。
本日は我が国屈指のエネルギー総合企業、ENEOSについて見ていきたいと思います!
2020年から昨年までのJXTGホールディングスから我々消費者にも馴染み深い名前であるENEOSに改称して最初の会計年度となります。
ENEOS(JXTGホールディングス)の2019年度の決算分析はこちらでさせていただいておりますので、これを踏まえて、2020年度の決算解説を本日はさせて頂きます🙇♀️
話は変わりますが、2020年は世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏が三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の総合商社5社に対して投資をしたのは記憶に新しいです。
正直、PBRを1倍を割るエネルギー企業という観点で言えば、このENEOSに対しても投資をしてもおかしくなかったのではなかったのではないかと個人的には考えております。
私もざっくりですがENEOSの決算状況および今後の脱炭素社会への適合政策を見ていくと日本企業でありながら投資必要額も少なくて十分に投資を検討する価値はあるのではないかと思うようになりました。
それでは、一緒にENEOSの2020年度決算および来期の経営見通しについて見ていきましょう!
ENEOS 2020年度実績・2021年度見通し
損益計算書
まずは、ざっくりと2020年度の実績と、2021年度の見通しをつかんでおきましょう。その後、次章以降で各年度の詳細につき検証して参ります。
2020年度については、在庫影響を除いた営業利益は倍増の2,155億円、最終的な営業利益は昨年の赤字から反転、1,140億円と+3,019億円と大幅な増益となったようです。
昨年2020年の決算発表時に見込んでおりました新型コロナウイルスの影響は引き続きあり、販売減少もあったものの、国内石油製品マージン、銅価格の上昇、石油開発の減損の反転、コスト削減の貢献などがあり、上記、在庫影響なし含む営業利益の大幅改善となりました。
2021年度の経営見通しにつきましては、在庫影響を除いた営業利益、最終的な営業利益ともに微増の増益を計画しております。
新型コロナウイルスの影響については言及されていないものの、市場環境を保守的に見積もった上での数字となっております。
結論、2020年度は、営業利益は昨年の赤字からの反転黒字、2021年度は増益となる模様です。
これを踏まえた上で、2020年度の実績と、2021年度の見通しについて見ていきましょう!
ENEOS 2020年度 通期業績
損益計算書
それでは、ENEOSの2020年度の損益計算書を見ていきましょう。
昨年は、新型コロナウイルスの影響、資源価格急落、石油化学製品マージン下落の3つの影響を受けて、最終的な営業利益は赤字転落となってしまいましたが、今年は+3,673億円となり、当期利益まで全て黒字化となりました。
営業利益2,542億円(前年差+3,673億円)
在庫影響除いた営業利益2,155億円(前年差+1,188億円)
当期利益1,129億円(前年差+2,856億円)
セグメント別営業利益を次に見ていきましょう。
2020年度は、石油化学製品、電力でマイナスがありながらも、それ以外の事業セグメントでプラスが出ており、在庫影響を含めなかった場合、含めた最終的な営業利益ともにプラスとなりました。
昨年はエネルギー事業で▲1,628億円、石油・天然ガス開発事業でも▲388億円と大幅なマイナスがあったのでそれと比べると大幅な回復が見受けられます。
連結バランスシート/連結キャッシュフロー
経営成績では2020年度はプラスとなったので、次にバランスシートとキャッシュフローを見ていきましょう。
連結バランスシート
連結バランスシートについては、ネットDEレシオも0.59倍となり、昨年比0.1ポイントも改善し、損益のみならず財政面での改善が見受けられます。
連結キャッシュフロー
連結キャッシュフローについてです。
上記の連結キャッシュフローは前年度との比較がなされていなかったので、下記の2019年度の連結キャッシュフロー計算書と照らし合わせながら紐解いていきましょう。
営業キャッシュフロー とフリーキャッシュフロー に関しては、IFRS第16号「リース」適用除いた場合も最終的な場合もともに2020年度が上回っております。
投資キャッシュフロー は昨年▲3,713億円に対して、2020年度は▲3,068億円と若干劣りますが、設備投融資もどちらも▲3,000億円規模は実行しておりますので、キャッシュフロー は2020年度は問題ないようも見受けられます。
2020年度は損益、財政状態、キャッシュフロー どれを取っても回復してきている様子を垣間見ることができました。
ENEOS 2021年度 通期業績見通し
損益計算書
先ほど、2021年度は微増の増益を計画していると申し上げました。
ENEOSの2021年度の経営成績の見通しは
営業利益2,600億円(前年差+58億円)
在庫影響除いた営業利益2,300億円(前年差+145億円)
当期利益1,400億円(前年差+260億円)
となっております。
次にセグメントベースで営業利益を見ていきましょう。
営業利益微増の主な要因は石油・天然ガス開発事業の回復が第一です。
しかし、エネルギー事業がまだまだ価格下落からのスランプから抜けきらず販売数量回復が限定的になることや、金属事業で共通費用が昨年以上に計上されることが想定されることから天然ガスの増益分を消して、全社的には営業利益は前年比微増という形で仕上がる模様です。
連結キャッシュフロー
続いて、連結キャッシュフローです。
営業利益は昨年並みなのですが、2021年度は休日影響や、法人税の支払い等で営業キャッシュフロー は2,300億円程度となります。
そして投資キャッシュフローは5,000億円程度のキャッシュアウトを計画することからフリーキャッシュフロー が▲2,700億円となり、2021年度はENEOSにとってキャッシュという側面で勝負を仕掛ける年となりそうです。
来期2021年度は中期経営計画の2年目です。来期はフリーキャッシュフローをマイナスにしてまでして、ENEOSが攻めの姿勢に出るのはなぜか。
それはENEOSの中期経営計画の見直しが関係しているようです。
中期経営計画の見直し
下記の通り、2020年度から2022年度までの3年間でフリーキャッシュフローを当初は1,500億円程度確保することを目標に掲げておりましたが、今回からは、フリーキャッシュフロー 0円で行くと宣言しております。
これは、下記の通り、在庫影響を除いた営業利益の3年間の類型が9,700億円から7,600億円へ新型コロナウイルスの影響で下方修正せざるを得なかったのが要因です。
下記の通り、3カ年累計営業利益の額を下方修正せざるを得なかったが、3カ年の累計設備投資1,5兆円は譲れない。
代わりにバッファーであったフリーキャッシュフロー 1,500億円をゼロとしてという果敢に攻めの姿勢に転ずるENEOSの経営姿勢が如実に表れております。
これだけキャッシュに余裕がない計画を打ち出しているので、配当政策もこの3年間は2020年度の22円を下限としてこれを維持するということに終始しております。
ENEOSの株主は2022年度までのこの中期経営計画の間は、ENEOSが次世代ビジネスを見据えて1.5兆円投資する姿を見てその後の収益拡大に期待して見守るしかなさそうです。
短期的な増配は無理なので、2023年度以降に増配などの企業価値が上がった姿に期待しながら静観することになるでしょう。
では、2022年度まで22円の配当で我慢はしますが、それ以降はきちんと利益成長するのか?配当を22円で据え置いたまま3カ年の累計設備投資1,5兆円はどのように使われるのかを見ていきましょう。
下記の通り、具体的な運開時期が示された投資案件が示されております。
石油の会社というと、今後の脱炭素社会では取り残されて終わっていくマイナスなイメージが先行してしまいます。
しかし、ENEOSに関しては上記の次世代エネルギー関連など具体的に会社自体が「変わろう」という姿勢が見て取れる投資を実行していくつもりであることがわかります。
現在、株価がかなり下がっている中、今後も2022年度まで増配が無い中で、株主として我慢を強いられているのは確かなのですが、我々株主のキャッシュが次世代エネルギーなどの次世代ビジネスに投資するための原資に取って代わられているのであれば、一定の合理性はあります。
そして、これで次世代ビジネスでもっと大きな収益を生む収益の柱をENEOSが打ち出した時は、後々の増配で帰ってくることも十分に想定されます。
今まで分析してきた中で、ENEOSは株主還元に関してはかなり積極的に行ってきた方の企業だと考えますので、ここは短期の増配という果実よりも、次世代ビジネスへの投資に向けさせて、将来のビジネスが生む増配という果実を取りに行くように見守ってみても面白いかもしれません。
まとめ
今回は、総合エネルギー企業ENEOSの2020年度決算、および2021年度の見通しについてみていきました。
2020年度は前年の赤字から復活して黒字化し、2021年度は微増ながら増益であることがわかりました。
しかし、2020年度から指導している3カ年中期経営計画で想定される累計営業利益が下方収益されたことを受けて、ENEOSは3カ年のフリーキャッシュフロー をゼロにしてでも、戦略投資1.5兆円を行う方針であることがわかりました。
この1.5兆円は次世代エネルギー関連に使われることがわかり、その投資計画も具体的で合理性のあるものであることが判明。
2022年度までは配当は増配はなく22円のままだろうが、この増配に使われたであろう原資が上記の戦略投資に使われて、大きなリターンを生むビジネスが確立されるのであれば、2022年まで配当維持を我慢するのは一定の理解はできる。
株価も3年前の800円台から半減しており今に至っており、PBRは0.54倍と極めて割安な評価が与えられております。

ENEOSホールディングス 株価
最低購入価格が5万円以下ですし、2022年度までは増配は無いが、その先の次世代エネルギーの展開を期待するのであれば100株くらい買ってみても面白いのでは無いかと思います。
以上、総合商社以外で日本株を買うのであれば、ネオコンオススメはENEOSでした!
それではまたお会いしましょう!
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