ちゃお!ネオコンです!
本日は、先日ご報告させていただきましたJR東海に続きまして、同じくJRグループのJR東日本について解説申し上げます。
下記の通り、JR東海にとって2021年3月期は大変厳しい1年であったことを申し上げました。
ドル箱の東海道新幹線を有するJR東海ですら大火傷してしまった2021年3月期ですから、東北地方など地域が広くJR東海ほど儲かる事業を持っていないJR東日本はもっと大変そうですね。
航空業界のJALやANAと並んで2021年3月期は苦境に立たされた鉄道業界を代表する企業、JR東日本。
それでは、定量的に、JR東の2021年3月期の経営成績のレビューおよび来期2022年3月期の経営見通しについて一緒に見ていきましょう!
東日本旅客鉄道(JR東日本) 2021年3月期決算
損益計算書
JR東日本の2021年3月期決算(単体)は、
営業損益▲4,785億円(前年差▲7,726億円)
経常損益▲5,177億円(前年差▲7,778億円)
当期利益▲5,066億円(前年差▲6,656億円)
とハッキリ言って本当にヤバい。非常に厳しい決算となりました。
JR東海は、
営業損益▲1,847億円(前年差▲8,409億円)
経常損益▲2,620億円(前年差▲8,363億円)
当期利益▲2,015億円(前年差▲5,994億円)
でしたから、当期利益でJR東海よりも▲3,000億円もマイナスだったわけですね。
言葉が出ません。
こちらが、2021年3月期の鉄道収入の実績です。
一番右の要素別増減額の欄にある新型コロナウイルス影響を全て足し合わせるとざっくり▲8,500億円くらいになります。
一番上の鉄道運輸収入が▲8,384億円ですから、ハッキリ言って新型コロナウイルスで全て需要が蒸発したと言っても過言ではありません。
一番上の売上が減ってしまっては、コストを削減しない限り利益改善はあり得ません。
次に単体営業費用の前年比較を見ておきましょう。
大体の項目でコストカットが前年と比べて遂行されており、一生懸命コスト削減活動にも努めましたが、正直売上の鉄道収益が沈んでいる以上、お手上げで、売上から当期利益まで全て赤字転落となってしまいました。
前年比▲428億円の人件費削減とは、ボーナス削減など社員にも痛みが伴う改革の断行が想像できます。
ちなみに、JR東海の場合、ボーナス削減は▲143億円とJR東日本の1/3程度でした。
もちろん人数が両者異なるので一概には言えませんが、JR東日本の方が絶対数は上回る削減を実行したみたいですね。
コスト削減実績
このJR東日本の涙ぐましいコスト削減の実績と来期以降も継続する計画にも目を通しておきましょう。
2021年1月に公表した1,315億円をさらに上回る1,450億円のコストカットを実行し、来期は700億円をさらに削減する計画を発表しております。
2021年3月期実績だと、JR東海が1,000億円のコストカットに成功したので、JR東日本は、それ以上の削減を達成したことになります。
キャッシュ・フロー計算書
次に、損益で大幅赤字が計上された時、一番に気になるのがキャッシュの状態です。
恐る恐る、下記、JR東日本のキャッシュ・フロー計算書について見ていきましょう。
営業キャッシュ・フロー
前年5,486億円もの営業キャッシュフローが一気に▲1,899億円ですからね。
厳しいものです。JR東海も営業キャッシュフローは前年6,000億円→▲1,693億円へのダウンです。
鉄道業界は後述するとおり、次世代ビジネス創出のための戦略投資のみならず、巨大な有形固定資産を維持更新するだけでもお金がかかります。
それを営業収益から稼げないとなると死活問題ですので、この営業キャッシュフローはJR東日本が始まって以来未曾有の危機だったと言えるでしょう。
投資キャッシュ・フロー
投資キャッシュ・フローは▲7,493億円と前年差+477億円と前年以上の支出となりました。
この投資キャッシュアウトを緩めずに、フリーキャッシュフロー ▲9,393億円を覚悟したのかは後ほど設備投資の部分で申し上げます。
財務キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フローは+9,833億円のプラスとなりました。
先ほどフリーキャッシュフロー▲9,393億円と申し上げました通り、これとほぼ同額の資金調達を行なったことがわかります。
最終的な期末キャッシュバランスは前年+441億円の1,979億円となりました。
損益のみならず、キャッシュのやりくりでも非常に厳しいマネジメントを強いられた結果となります。
有利子負債残高の推移
先ほど財務キャッシュ・フローは+9,833億円のプラスとなり、これはフリーキャッシュフロー▲9,393億円とほぼ同額の資金調達を行なったと申し上げました。
約1兆円にもわたる資金調達をした以上、借り入れでの調達である場合、有利子負債残高も激増したはずですので、早速見て見ましょう。
JR東日本の有利子負債残高について下記の通り示しました。
はい、予想的中!
ネット有利子負債は、2021年3月期末で41,522億円と1兆円以上積み上がっておりますので、JR東日本が2021年3月期の財務キャッシュフロー+9,833億円をほぼほぼ借入で賄ったことがわかります。
来期以降、JR東日本は重い借金を背負いながら経営をしていくことを強いられます。
株主還元
JR東日本の配当金については、下記の通りです。
2021年3月期はここまで損益、キャッシュフロー、財政状態、3拍子揃って爆死だったので、165円から100円への減配となります。
そして、来期も引き続き100円据え置きでの配当政策を講じていく予定です。
少しでも前期の配当165円の時に戻って欲しいですが、正直まずは来期黒字転換してからどれだけ利益が出るかという点を検証して見ないとなんとも言えませんね。
では、続きましてJR東日本の来期の経営成績を見て見ましょう!
東日本旅客鉄道(JR東日本) 2022年3月期業績予想
損益計算書
JR東日本の2022年3月期業績(単体)予想は、
営業損益370億円(前年差+5,155億円)
経常損益0億円(前年差+5,177億円)
当期利益250億円(前年差+5,316億円)
となっております。
JR東海は、当期利益900億円だったので、JR東海の1/3くらいが想定されております。
JR東海との比較はいいとして、JR東日本自身、2020年3月期は当期利益1,590億円だったので、まだそれには遠く追いつけないレベルでの損益となっております。
これでは、2020年3月期の配当165円に戻るのはまだまだ時間がかかりそうですね。
それに、このまだまだ遠く及ばない単体当期純利益250億円ですら、下記の通り、新型コロナウイルスの影響が改善したという前提条件を満たした上での話です。
この前提に基づくと、2Q以降は在来線関東圏は約85%、新幹線約下半期は80%とほぼ平常運転と変わらぬ状況を想定した上での黒字転換と言えそうです。
したがって、新型コロナウイルスがこれ以上継続する事態となれば、当たり前ですが、JR東日本の経営見通しはかなり厳しくなります。
この前提の上での鉄道運輸収入ですが、通期計画で全て100%以上の増加で計画されております。
コスト削減実績
2Q以降、ほぼほぼ平常運転が見通されますが、利益がまだまだ遠く及ばない以上、来期も引き続きコストカットも強化していかねばなりません。
来期は、ネットで▲226億円の営業費用の削減を目指しており、16,400億円の単体営業費用となる見通しです。
コストダウンが最大の▲587億円を占めておりその中で修繕費が▲308億円となっているので、保守サービスとか攻めの投資でもない削れる費用から削って、なんとかコスト体質を強化したいというJR東日本の意図が垣間見れます。
(事故が起きないような最低限のメンテナンスであることを願いますが)
収益力向上 成長・イノベーション戦略の再構築
では、保守サービスのように大きな将来の収益を生む投資ではない経費を削って、何にお金を投じるのか、JR東日本はこの苦境をどう跳ね返すような秘策を考えているのかについて見ていきましょう。
下記はその未来戦略の一例ではありますが、このようなことをJR東日本は考えております。
駅をただの点として考えるのではなく、面として、様々なサービスと結合させて将来のビジネス構想を描いていることがわかります。
設備投資
では上記のような未来戦略にはお金が必要です。
そこで来期の設備投資の推移と計画について見ておきましょう。
下記の通り、設備投資は2020年3月期の7,406億円には及びませんが、6,740億円と攻めた金額を計画しております。
着目すべきは重点枠(イノベーション投資)で、2021年3月期には及ばないものの、来期も560億円を計画しております。
2年連続で500億円を超えておりますので、1兆円借り入れしてでも将来のビジネスを育成させるために必要は投資だったのでしょう。
この2021年3月期に爆死してしまいましたが、ここで保守的になるのではなく、将来の大きなリターンを期待していくJR東日本の未来志向、投資志向の姿勢が見て取れます。
株主還元
下記は来期の配当金に関してです。2021年3月期の株主還元の部分で先に申し上げたのですが、前年と据え置きで100円です。
JR東日本としては、1兆円借り入れたのは今後のビジネスのためであり、配当金に使いたく無いのが本音でしょう。
来期の営業キャッシュフローからもこの配当原資を全て捻出するのは困難でしょうし、この1兆円の中から配当を出すことが想定されます。
JR東日本にとって厳しいキャッシュアウトとなりますが、株式会社のトップは株主なのでこればかりは仕方ないですね。
最後に
最後にJR東日本のここ5年間における株価の推移を見ておきましょう。
一時期は6,000円を割ってしまいましたが最近は復調し8,000円近くとなっております。

正直まだまだコロナ前の10,000円台に戻るのは難しいですが、回復ペースとしてはまずまずでは無いかと思います。
財務面では結構厳しいかと思いましたが、やはりJRという安定企業というイメージがあるのでしょうか。
マーケットからの評価はやはり高いためこれだけの回復がなされているのでしょう。
新型コロナウイルスでハシゴを外されてしまったのはJR東海のみならずJR東もまだ同じくでした。
資金調達1兆円で来期以降厳しいかじ取りが求められますが、きちんと攻めの投資もしますし、未来戦略も描いておりますので、引き続きJR東日本の利益回復の過程を当ブログでwatchしていきたいと思います!
今回の報告は以上です。
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